工藤伸一の小説
切腹マシーン Automatic Samurai Suicide
【第1稿】 2002/12/05 【最終更新日】 200312/05

「セックスしたい」と言ったつもりが緊張しててロレツがまわらなくてうっかり「切腹したい」と口走ってしまった。当然のことながらそれに気付いて間違いを正そうと思いはしたもの
の、彼女があんなに嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら「まじで!? あたしそういうのって男らしくって憧れちゃう! さっすが武士の子孫だけのことはあるよね! どこでするの!?」って言うもんだから後戻りできなくってついつい「いますぐここでしよう」と返事したら彼女はいそいそと押入れに向かい何やらごそごそやってるので「何してるの?」と聞いてみたら「切腹用のグッズ探してんの。あんたも手伝ってよと」言われ一緒に押入れの中を探ってみたところ天狗の面やら熊の木彫りやらピンクローター、極太バイブなどに混じって、白装束とドスと日本刀を発見するやいなや彼女に「そうそう、それよ。あたしが介錯してあげるから安らかに逝けるわよ」と白装束を着せられて、こうなってはもはやするより他に仕方あるまいと覚悟を決めてエイヤッ! とばかりにドスをどてっ腹に突き立ててまずは横に引きそのまま今度は縦に引いたところで「さようなら〜!」といいながら彼女の手によって振り下ろされた日本刀にて切取られた僕の首は勢いよく障子をぶち破って隣の母ちゃんの部屋に飛んでったので母ちゃんが泣いている姿を目に焼き付けたまま薄れ行く意識のなかで「先に逝っちゃってごめんね、母ちゃん」とつぶやいてみたつもりだったけどクビがちょん切れていたからその声は届かなかったに違いないけれど、そんなことよりも彼女よ、死後硬直して屹立した僕のペニスをほおばるなんて馬鹿なことはよしてくれよと思ったのもつかの間、ペニスから精液が飛び出すと同時に僕の脳にもリモート作用があるかのようにその快感が伝わってきたのでとりあえずよかった。
   (了)

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