工藤伸一の小説
罰血
【第1稿】 :2002/11/23 【最終更新日】 :2002/11/23

 今では職業や階級を示したりするためのものとしてだったり、あるいは単なる装飾品として使われている「バッヂ」だが、実はその原点は聞くもおぞましい暗黒時代のヨーロッパのとある王政国家における血塗られた歴史にあったのである。
 その国では、仕事でミスを犯したりちょっとした悪事を働いた場合に、罰として生身の肉体に直接、ピンの付いたバッヂを突き刺され、それは一生はずしてはならなかたのである。
 仕事の苦手な者や粗暴な性格の持ち主は体中バッヂだらけで、睡眠中に寝返りを打ったりするたびにバッヂのピンがこすれて全身血まみれになっていたのだ。
 しかしあるとき、このような惨い仕打ちを受けた者で溢れかえっていた国内の状況を嘆くとある若者が、国王に反旗を翻し賛同者を伴って一斉に王城に侵入して王族を打ち倒し、革命を成功させたのである。そしてその若者は新たなる王の座に着くなり、『バッヂ法』なる法律を制定した。
 それは過去の血塗られた時代を繰り返さないためにも、この歴史を子々孫々にまで伝えようという目的から考えられたものだった。
 いわく、「国民に罰を与えるためのいまわしい存在だったバッヂを、今後は職業や階級を示すための平和的な道具として有効に活用してゆくべし」という内容だ。
 そしてこのバッヂの新しい使用法は次第に近隣国家にも広まり、今ではすっかり世界中で愛用されるまでになったのである。 (了)

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