工藤伸一の小説
聖バタイユ女学園専属心理療法士
太宰治虫のむふふ診察日誌
 
【第1稿】 2002/11/20〜 【最終更新日】 2006/06/13

いずれにせよ、エロティシズムは理不尽なものである。――ジョルジュ・バタイユ

      ※


なんちって。
こういう言葉を冒頭においてかっこつけてみたかっただけよ〜ん。
むふふ。


      ※


第1話・赴任〜
1人目の生徒・プチストレス美少女アユミ
〜futuaring battle of
           どスケベ心理療法士オサムシ
                 VS
           やさぐれ爆走少年ケンジ〜

人里離れた山の中腹辺りで私はタクシーを降りた。
そしてそこにそびえたつ、まるで西洋の名画のなかから飛び出してきたかのような洒脱かつ豪華絢爛なデザインの、巨大な建物を見上げた。
桃色の屋根瓦と乳白色のレンガ壁のコントラストが男心をくすぐるね。
私は、見事なまでに女の園を象徴化させることに成功した名も知らぬ建築家に、思いを馳せずにはいられなかった。
彼はきっと、さぞかし女にもたてに違いないな。
実にうらやましいことだ。
しかし同時に、そういうことなら私も決して負けてはいないはずだぞと、見ずしらずのそしておそらく故人であろうその建築家への対抗心をあらわにして私自身のことを振り返ってみた。
日米の混血児であった私は、やはり目鼻立ちのくっきりとした派手な顔立ちをしている。
そしておそらくは母ゆずりと思われる、男ながらにきめ細やかな美肌は、私の自慢である。
それに私は元バスケット部だし、背が183センチもあるのだ。
もてないはずがない経歴といえるだろう。
しかしいかんせん私には、あるどうしようもない欠点があった。
そう、私は無類のロリコン趣味なのである。
といっても男女の区別もあいまいな幼女にしか関心のない真正のロリコンとは違う。
成熟しきった大人の女って手合いが苦手なだけで、どうしても私のストライクゾーンは、つぼみが芽生え始めた年頃の、いわゆる女子校生あたりに限定されてしまうのだ。
なんといってもセーラー服が大好きなのである。
残念ながら高校まではずっと全寮制の男子校に通っていたから、女子校生と触れ合う機会なんてそうそうなかったもので、これは多分、その反動なのかもしれないな。
まずいな、こうして自己紹介をしているだけでも妄想がふくらんで、股間までふくらみはじめてしまったではないか。
いかんいかん、これから大事な赴任の挨拶があるというのに、スラックスの前にテントを張っていては、大恥をかいてしまう。
いまのうちに、冷静さを取り戻しておかねば。
とりあえずまだ時間があるので、私の経歴についてもう少し話しておこう。
それでどうにか股間のやんちゃ坊主もおとなしくなってくれることだろう。
さてそんなわけで、私の生い立ちである。
何を隠そう私の父は、ショー・コスギよりも一歩早く日本初のアクションスターを目指して映画の聖地ハリウッドに単身乗り込んでいた、二枚目俳優だったのだ。
いや、厳密に言うと、二枚目俳優志願の美青年だった。
そして父は、表舞台でのスターには残念ながらチャンスがつかめず、なりそこねたそうだ。
しかし持ち前のスケコマシのテクニックを活かし、裏舞台でのスターとして数々のナイスバデーパツキン美人女優たちを夜ごと慰めていた、伝説の男娼であった。
私はそんななか、父の顧客の美人女優の私生児として生を受けた。
母はその後、とある資産家と結婚することになっていたために、養育費とともに幼い私を父の手にゆだねたそうだ。
そういうわけで私には、母と暮らした記憶はないのである。
母のことについて知っているのは、学園物で活躍した美人女優だったらしいということくらいで、顔を見たことはない。
父いわく、少女のようなあどけなさを持った愛らしい女性だったとのことだ。
もしかすると私がロリコンになってしまったのには、父から聞いた母の面影への憧憬が、大きく影響しているのかもしれんな。
そんなわけで私は、自分がロリコンであることにはある種、誇りさえ感じているのだ。
それはさておき、もう少し話を続けさせてくれ。
父はその後、私を連れて日本に帰ってくるなり各種風俗店の経営に着手し巨万の富を築いた。
しかし私が高校生の時だった。
父は悪い女にだまされて破産し、失意のうちに精神の安定を崩し、酒の勢いで自ら命を絶ってしまったのだ。
そんな父を不憫に思った私は、家財道具をうっぱらって手に入れたなけなしの財産をもとにして、こうして心理療法士の資格を取得したというわけなのである。
さてそんなわけで、ここは心理療法士である私が今日から赴任されることになっている、全寮制の名門女子校なのだ。
ふう。
ヘビーな話をしたおかげで、どうにかふくらみかけた性欲は収まってきたようだな。
よかったよかった。
しかしなんだか、どっと疲れてきた。
似合わないことはするもんじゃないな。
そうそう、私の名は太宰治虫という。
どこかで聞いたことのあるような名前だと思われるだろうが、その通り、父が愛読していた太宰治と手塚治虫から採って名付けられたそうだ。
そして父の希望通り私は、立派なロリコンのナルシストとして成長した。
なんていうと2人のファンの方から怒られてしまうかな。
ちなみに私はそろそろ30歳後半を迎えようという、ある意味おとこ盛りの年頃ではあるが、いまだ結婚暦はない。
そもそもロリコンなのだから一緒に老いていくだろう妻への愛情を維持できる自身もないし、マンコならぬチンコから生まれたのではなかろうかというほど根っからの浮気性なものだから、独身主義は絶対的ポリシーなのだ。
浮世にはバツイチやら略奪愛やらといった不穏な言葉がまかり通って久しいが、いざ結婚の契りを交わすとならば一生のみぎりとなすのが日本男児の義というものではなかろうか。なんて大層なことを言えるのも独身貴族ならではの特権かもしれないがね。
とにかくまあ、簡単に結婚なんて口にすべきではないし、子を成すような行為には細心の注意を払わねばならぬ。
ちなみに私は万が一に備え、パイプカットしている。
もしかすると将来一生愛すべき相手が出てきたときのためにと精子バンクにも登録済みだから、子供を作れないわけではないが、一時の過ちで不憫な子を増やすようなこともない。
片親でも幸せに暮らしている子供だっているとは思うが、こうして見事にひねくれた性癖を得てしまった私自身が何よりの生きた証拠である。
成長の妨げになる要素が少ないにこしたことはない。
しかしそれにしても、希望通り女子校配属に決まるなんて願ったり叶ったりってやつだな。
これでこれから先は立場を利用してよりどりみどりの美人女子校生達とあんなことやこんなことやそんなことまでもやりたい放題の夢のパラダイス生活の到来と来たもんだな。 
 むふふ。
むふふふふふふふふ。
こりゃ笑いが止まらん!
むははははははは!
げへへへへへへへへ!
がほっがほっ!
げほげほげほ!
いかんいかん、また妄想にふけってしまったではないか。
それと言い忘れていたが、実は私は結核患者なのだ。
現代の医学では治る病気らしいが、幸い症状は軽いので、ほったらかしにしている。
なに?
結核患者が学校で働けるわけがないって?
そんなことを私に言われても困るよ。
現にこうして私は採用されているのだから。
そんなことよりこの学校は多くの女流作家を輩出している文科系の名門校と言われているから、結核にロマンティックなイメージを持った文学少女がわんさかいることだろう。
結核持ちだなんて文学青年っぽくってカッコいい〜とか言われてモテモテになるだろうことは間違いないな。
やはり笑いが止まらん。
むははははははは!
げへへへへへへへへ!
がほっがほっ!
げほげほげほ!
やばいな、ちょっと気を抜くと、後から後から妄想が湧いてきやがる。
ほんと自制しないとな。
さてそんなわけでまずは理事長室に挨拶に行かねばならぬ。
これがまたお美しい方なんだ。
私は理事長室のドアをノックした。

  ※

「どなたですかあ〜?」
 妖艶な大人の美女の肉声……ではなく、むしろ甘ったるいアニメ声だ。顔に似合わず
あどけない一面も持っているのかもしれぬ。これは期待できるぞ! むふふふふ。
いやしかし、初対面から鼻の下を伸ばしていてはいかんな。ここは勝負どころだ。
「今日からお世話になります心理療法士の太宰です」
できるかぎりダンディーな声色で答えた。
「お待ちしておりました〜。どうぞこちらへ!」
 ドアを開き出迎えてくれたのは、メイド服を着た若い女性であった。
なんだ、理事長ではないのか。でもこの娘もなかなか可愛らしいではないか。
しかし本丸を忘れてはならぬぞ。
 私はゴージャスな装飾が施された理事長室の奥に目をやった。
そこには妖艶な大人の美女……ではなく、むしろ面妖なロマンスグレーの紳士が座っていた。
はて、誰だろう?
「理事長はいらっしゃいますかな?」
「ええ、私です」
紳士が答えた
「またまた、ご冗談を」
「私が理事長の姉歯源一郎です」
「まさか! 理事長は二十五歳独身の才媛・堀江佑月女史のはずだ!」
「ああ、それは源氏名ですじゃ」
「源氏名って、風俗をされているのですか?」
「あいや、失敬。ペンネーム、もとい、パソコンをするときの、あれじゃよ」
「ハンドルネームですね!」
「そうそう、それじゃ」
「そういうことでしたかー。って、そんなばかな! だって約束が違うじゃないですか! 私はあなたが夜をさびしく過ごすのを慰めてくれる男性を募集していると2ちゃんねるに書いていたのを信用して手を貸したんですよ! それなのにネカマだったなんて、男の純情を弄ぶな!」
「いや、それはほんとうのことですよ。私はゲイですから」
「むごたらしいジョークですね」
「それはさておき、あなたは合格です。私が求めていたのは、まさにあなたのようなむせ返るほどに男性的な存在です。私だけでなく、ここの男性教員はみなゲイなものですから、生徒たちに男らしさを見せつけられるものがおらぬのです。二世紀も前から全寮制のエスカレータ教育を売りにしてきた伝統を壊すわけにもいかず、社会に出てから男性恐怖症にでもなりはすまいかと心配だったのです。これからは頼りにしますよ」
「本当にゲイなんですか……」
「あなたに手出しはしませんから、ご安心下さい」
「それならまあ、いいでしょう」
「さて、これから朝礼です。生徒たちに紹介しますが、挨拶の準備はよろしいですか?」
「ええ、おまかせください」
秘密の花園どころか火鉢で出鼻をくじかれた気分だ。
しかしこの後は美少女たちにお披露目の時間、これこそが本命だ。
私は鼻息を荒くしながら講堂に向かった。

    ※

講堂の豪奢な西洋風の扉を潜り抜けてみると、そこは色とりどりな一面の花盛り。
ああ、これが女子校なんだ! これぞ花園なんだなあ!
「ダザイ先生、どうなさいました!? ハンケチ、使います?」
「いや失敬、由緒正しき講堂の雰囲気に圧倒され、のぼせ上がってしまったようでして。ははは」
学長が貸してくれたピンクの花柄ハンケチで鼻血を拭いながら、チラリと周囲を盗み見た。
よかった、誰も気づいていない。ここでキザにキメられなくては、幸先が悪いからな。
なるたけクールな面持ちを装いつつ、先に壇上に上がった学長からの呼び出しを待った。
期待と不安の入り混じったような女生徒たちの好奇なまなざしがココロやコカンに突き刺さる。
この緊張はまるでナイフみたいに尖っては盗んだバイクで走り出す青少年の気分だ。なんのことやらよくわからんが、とにかく尋常ではない状況下であることが伝われば、それでいいのだ。
「生活はいかに豊かになろうとも殺伐とした事件が絶えることのない飽食の現代、心の豊かさが見直されています。そこで本学におきましても諸君の心のケアにまで気を配った真の総合教育の場を目指したく、本日からココロのプロフェッサーを迎え入れることと相成りました。皆さんのなかにも新聞やテレビで見聞きしたことがある人も少なくないのではないでしょうか。世界的な活躍ぶりも目覚しい心理療法士のダザイオサムシ先生です!」
 盛大な拍手を背に、いざ壇上へ。
「あームホン! オホッゴホッ、ゲホゲホゲホ! ただいま紹介に預かりしました、心理療法士のダザイオサムシです。学長から大げさなご紹介を受け戸惑っておりますが、要は近所の話し好きな気のいいアンちゃんだと思って、いやいや、もはやオッサンですけれど、ともかくどんな内容でもかなわないので、いつでも気軽に話しに来てほしい。お嬢様がたの精神的成長のバックアップに、些細ながらも貢献できれば幸いであります。どうぞ今後ともよろしく」
 なんとかうまくまとまったかなと気を抜いた、その時。
「ダザイセンセー、チョー素敵!」
どこからともなく、黄色い声援が!
 思わず目を向けると、何ともウブいハイネのような君の瞳。
「1年Q組のハメスギアユミでーす! センセーのご本、愛読してます!」
「まじで? もとい、ありがとう。覚えておくね」
 アユミタンの投げキッスを尻目に、あくまでクールに退場。
最初からあんまりガツガツするは、ひかえんとな。
その後も朝礼が続くというので、私はメモ用の極秘ノートと万年筆を出した。
「そのノートは何ですの?」
「ああ、これはですね、生徒たちの精神状態を大まかにメモしているんです」
「遠目で分かるものですか?」
「あくまで参考程度ですがね」
「素晴らしいですわねえ。それに仕事熱心な方。安心しておまかせできそう」
「頼りにしてください」
実はこれ仕事なんかではなく、ただ単にお気に入りの生徒数名をピックアップしているのだ。クラスと名前と特徴をつぶさにチェックしていく。
朝礼が終り解散する生徒たちのうちの数名を、さっそく私は呼び止めた。
「私は表情を見ただけで悩みがあることがわかるのだよ」
適当なことをいって、後でカウンセリングルームまで来るように言う。
「はーい! すぐいきまーす!」
何人かが一斉に返事をくれた。
なんて素直なコばかりなんだ! 
明日から頑張るぞ! 
むふふ。
むははははははは!
げへへへへへへへへ!
がほっがほっ!
げほげほげほ!

   ※

「備品が届くのは夕方頃ですので、まずは別の空き教室で準備などなさっていただけますか?」
学長に促され空き教室のデスクに腰を据えつつ学内資料に目を通していたところ、「派遣アシスタント(女性限定)」という書類に目が留まった。白ブラウスにタイトスカートのモデルとおぼしき女性のまばゆい営業スマイルの裏に、えもいわれぬ心象風景が透けてみえた。なるほどこの手の女性も悪くないなとさっそく電話を入れ、即日勤務可能者の履歴書をファクスしてもらう。
一瞥してすぐさま、再コール。
「チェンジは何回まで可能ですか?」
「なにか問題がございましたでしょうか?」
「何がって、顔だよ」
「……顔ですか?」
「写真じゃよくわからんのでね」
「……それがどうだというのでしょうか?」
「どうって、私は美人のアシスタントを希望しているんだよ」
「美人って、どうしてでしょうか?」
「どうしたもこうしたもない! 女は顔だ!」
「失礼ですが、お客様は私どものお仕事を性を売り物にするようないかがわしい種類のお仕事と、勘違いされていたりしませんか?」
「まあ、似たようなものなんじゃないのかね?」 
「なんですって? わたくしどもは、そういう商売をしているわけではないんですよ!」
「そんなマジにならなくたっていいだろ。フェミニズムなんて時代遅れだろ」
「いい加減にしてください! あなたのような男性がいるからいつまでたっても女性の社会進出がままならないんです!」 
「わかったわかった、そうヒステリックにならなくっかっていいじゃないか。耳が痛い。それじゃ、もういいよ。こちとらわんさか女子校生に囲まれての生活だからね。女には不自由しとらん」
「まあ! 何て言い分でしょう!? そんな危険な先生のもとにうちのスタッフを送るなんて、こっちが願い下げです!」
「そうかいそうかい。わかったよ。んじゃな」
ふ〜。
なんてこった。
慣れないことを頼むんじゃなかったな。
まあいいか。
そうこうしているうちカウンセリングルームに設備が届いたとのこと。
ここが私のハーレム、もとい職場となるわけね。楽しみだなあ。

   ※

翌日。
「ダザイせんせ! こんにチワワ♪」
おっと、とうとうおまちかねの、一人目の生徒の登場と来たもんだ。
しっかし、『こんにチワワ』だって?
何だそりゃ?
そういえば、この学校は家柄や親の資産さえしっかりしていれば、どんなに勉強が出来なくても入学できるという話を聞いていたが、まったくその通り。
あいさつからして、聞きしに勝るアホそうな按配ではないか。
これなら、いけそうだな。
しかも年齢にそぐわない、見事にエロい顔立ちと体つきをしてるじゃねえかよ、こんちくしょうめ!
芸能人にたとえると、あれだ、オレンジジュースの「なっちゃん」の娘っこに似てるな。
髪型と眉毛の吊り上り方が、まさにクリソツじゃんかよ。
ほんでもってこの、たまご型の顔の輪郭がいいね。
ほっぺたの肌の質感もぷちぷちと水分を弾きそうな若々しさに満ちているではないか。
こりゃもう本当に、たんまんないね。
むふふふふ。 
ぐふふふふふふ。
がほっがほっ!
げほげほげほ!
さてさてそれでは、どんな感じで攻めていこうかな。
「こんにちは。それで今日は、どうしたのかね?」
「あの〜最近、友達とかと上手くいってなくて、ストレスとかたまっちゃってて困ってるんですけど」
「そうか。んじゃ、スポーツとかすれば?」
「スポーツ、苦手なんです」
「じゃあ、カラオケとか」
「歌、うまくないですし」
「ん〜、TVとかゲームとか漫画とかは?」
「興味ないんです」
なんともはや、思ったよりもアホな娘だな。
よしよし、いい感じだぞ。
ここで奥の手を出してやろうじゃないか。
「そうか〜、じゃあ、とっておきの方法があるよ」
「なんですかそれ?教えて下さい!」
「誰にも内緒にできるかい?」
「大丈夫です。口は堅いです」
「実はね、男の人のおちんちんをしゃぶると女の子は精神的な安らぎをえられるものなのだよ」
「え〜!? まじですかそれ??」
「まじもまじ、マジマジ君さ! 世界的な性の伝道師たる私が言うのだから、間違いはない」
「電動コケシなら小耳に挟んだことありますけど」
「見かけによらず、耳年増だねえ……」
「馬鹿にしないでください! 小耳だけじゃなく股にだって挟んでるんですから」
「なんとまあ! それなら話は早い! 百聞はイチモツにしかず、試してみるかい?」
「先生のをしゃぶってもいいんですか?」
「じゃ、あ〜んして」
「あ〜ん」
うほほほほほ!
夜の酒場でだって、こうはうまくいかないもんだぜ。
むむむ。
けっこう器用に舌を動かすもんだな。
意外とうめえじゃねえかよ。
恥ずかしがりながらも、いかにも美味しそうに舐めてやがる。
さきっちょを舌先でちろちろしたりするなんて、遊んでる娘なのかもしれんな。
「あ〜そこそこ、そこがいいんだよ」
「は〜い」
「しかしうまいもんだね。君はこういうこと、慣れてるのか?」
「へ? まさか〜、こんなのはじめてにきまってまふよ〜」
「そうなのか? それにしては、舐め方がつぼを得ているじゃないか」
「ほえ〜、つぼ?」
「とにかく、うまいなってことだよ」
「あ〜、多分、ソフトクリームが大好物だからかな?」
「なるほどね」
んなあほな。
まあしかし、現役女子校生の生フェラってのは、とんでもなく気持ちいいもんだな。
むほほほほほほ。
「でね、しばらくしゃぶってると白い液が出てくるんだ」
「精子ですよね? 保健体育の授業で聞きました」
「お、えらいね〜よく勉強してるようだ」
「えへへ。ほめられちった」
「それをね、飲むと効果抜群なんだよ」
「わかりました。じゃ、飲みます」
「素直でいい子だね。きっと将来、いいお嫁さんになれるよ」
で、口内発射でごっくん。
苦いのを我慢しつつ半分困ったように微笑みながら!
むほほほほ。

  ※

「先生、今日はおちんちんしゃぶらせてくれて、精子まで飲ませてくれてどうもありがとうございました!」
「いやいや、初めてにしては気持ちよかったし、こちらこそありがとう」
「なんだか、本当に落ち着いてきちゃった」
「そうだろそうだろ? 先生の言うことにうそはないのだ」
「あの……それで落ち着いたら言う勇気がでてきました。実はもうひとつ、聞いてもらいたいお願いがあったんです」
「ほうほう、なんでも聞くぞ。どんなはなしかな?」
「はい。実はあたし、ふもとの中学の頃からつきあっていた彼氏がいるんです」
「ほほお」
「ケンジっていうんですけど、その人、いま暴走族に入っちゃってて」
「あれまあ、それはいかんね」
「……それで、いまも彼のことが好きなんですけど、こわくって」
「そうか。しかしなあ、そういう危ないやつは忘れるわけにいかないのか?」
「違うんです! ケンジは本当はそんな人じゃないんです!」
「そうなのか」
「はい。ケンジはボクシングをやってたんです。中学のとき、不良に襲われそうになったあたしを助けようとして不良グループの一人を殺しちゃったんです」
「なるほどねえ。……って、なぬ!? こ・こ・こ・こ・殺したって!?」
まいったなこれは。私に相談されても困るな。どうしようかな。
「そうなんです。それで、ケンジはそのことを隠すかわりにと用心棒として暴走族の仲間にされたんです。ケンジはあたしのことを心配して、それから連絡をくれなくなってしまいました。先生、どうにかできませんか? こんなこと、他の先生や友達には打ち明けることができなくて、ずっと一人で悩んでたんです!」
「そうか。なんとかしてやりたいことはやまやまだが……」
これはさすがに手が出せんなあ。金が入るわけでもないしなあ。
「なんとかしてくれたら、あたしのバージンをあげてもいいです!」
「なんだって!? そうか、わかった! 私に任せなさい!」
「本当ですか? ありがとうございます!」

  ※

そんなわけで私は、ふもとにある暴走族の溜まり場にむかうこととなった。
しかしどうしよう。
安うけあいしてしまったものの、私はもうそんなに若くもないし。
心理療法士の知識を応用してどうにかできればいいのだが。
ヴロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……
この爆音は! このへんにいるのか。
やっぱ逃げちゃおっかな。……いやいしかし、美少女との夢の時間が待っているのだ。どうにかしたい気もするな。
でもやっぱ、今日のところはやめとこう。別にすぐじゃなくてもいいわけだし。
「よお、おっさん。それって、ベルサーチだろ? いいスーツ着てるじゃねえか。ちょっくら俺らにもめぐんでもらえないかなあ?」
後ろから声をかけられた。もう手遅れだ。こりはやばいな。やばいなこりは、ヤバいぜアニキ!
「いやあ、そうかね? でもこれ、もらいものなんだよなあ。金なんて持ってないよ」
「ああ? そんなこと言って、全身ブランドまみれじゃねえかよ」
「あはは。そういわれてみれば確かにね」
「おいおい、おっさん。ふざけるのもたいがいにせえよ?」
凶悪な眼差しから顔をそらしたところ、近くのビル壁に晴れらている化粧品の広告が目にはいった。往年の名画『お熱いのがお好き』の有名なワンシーンを模している。
あることを思い出した。いい手があるじゃないか!
試したことは無いが、不良少年なら、たいていは多分これでいちころだぞ。
私はおもむろにジャケットを脱ぎ捨てた。
「お、なんだいオッサン、やる気か?」
好戦的な笑みを浮かべつつも、どことなく腰が引けている。うまくいきそうだ。
ワイシャツを脱ぎスラックスを下げたところで、太鼓腹があらわになった。かつては理想的に割れていたはずの腹筋も、いまやどこにあるかさえわからない。酒と女にいりびたりの放蕩生活がもたらしてくれたものだと思えば誇らしくさえもあるのだが、この場においては相手を油断させる余興にしかなりえまい。だが、それさえもまた想定の範囲内だということにまでは考えが及ぶまい。まさにホリエモンばりの粉飾体型というわけだ。
「なんだいオッサン、そのカラダで動けるのかよ」
神をもおそれぬ少年たちのナイフのような嘲笑が五臓六腑に突き刺さる。
これからが正念場だ。
さてとばかりに、私はパンツを下ろした。
「こ、これはまた見事なお手前で……」
度肝を抜かれ言葉尻まで丁寧になった少年たちは道端にひれ伏した。
「おみそれ致しました、大将!」
そして彼らもまたブリーフを下ろし短小包茎のイチモツを晒すに至り、治虫の推理が的中していたことが明白となった。すなわち彼らの暴走の要因は性器の小ささにこそあったのだ。抑圧された肉体的劣等感のコンプレックスが彼らのプライドを支えていたのだ。見事な身体能力を誇示する黒人文化を敵視してきた白豪主義はこんなファー・イーストの地方都市にまで類を及ぼしていたのである。

   ※

さてそんなこんなで無事に連れ帰されたケンジと、アユミはよりを戻す。
これじゃ、手がだせんではないか。怒らしたらこわいし。
期せずしてとんだキューピットになってしまったオサムシは、ひとり嘆くのであった。

   ※

ところで治虫が広告から得たという啓示は何であったのであろう。モンローは裸に香水だけ身に着けていたという説がある。それこそが今回の窮地を乗り切る知恵を生み出したのであった。すなわち最大の攻撃は裸を晒すこと。オサムシの性器からは香水のかわりにむせ返るほどのイカくさいフェロモンが放出されていた。それは同時に男社会に生きるヤンキーたちを黙らせるに申し分のないほどの男気を感じさせる神器だったのである。


第1話・赴任〜
1人目の生徒・プチストレス美少女アユミ
          〜futuaring battle of
           どスケベ心理療法士オサムシ
                 VS
           やさぐれ爆走少年ケンジ〜 (了)

第2話予告・2人目の生徒・ダイエット美少女ホノカ
        〜futuaring battle of
        どスケベ心理療法士オサムシ
              VS
        いんちき健康用品営業担当者ダイスケ〜


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