工藤伸一の小説 |
俺が煙草を教えた女 A Lady Teached Smoking By Me When The Steady Days Ago |
【第1稿】 2002/04/06 【最終更新日】 2003/02/19 |
3度目の情事の後だったな。
お前が俺のまねをして煙草を吸い出したのは。 「初めてじゃないの。前に吸ってた事あるの」 なんて言いつつも、吸いながら火をつけることも知らず、 なかなか煙草に火を付けられずにいたお前。 俺が初めての相手だったのに、処女じゃない振りをしていたお前。 気の強い女だったよ。 だけどよく尽くしてくれる女だった。 お前はそのうちに、俺のセッターはきつすぎるからと言って マイセンを自分で買って吸うようになった。 お前とこうして会うのは、あれから何年ぶりだろうな? 俺と偶然会って喫茶店に入ったお前が、 「煙草を買う」 って言うから、俺のセッターをお前に分けてやろうとしたら、 「日本の煙草は嫌いなの」 とお前は言った。 不審に思う俺を尻目にお前が買ってきたのは、マルボロ・ライトだった。 そして2人がまだ付き合っていた頃の昔話とか、お互いの近況なんかの 話をしてるうちに、お前の今の彼氏がやってきた。 それでようやく煙草を変えた理由がわかった。 お前の彼氏がシングルのライダースジャケットのポケットから取り出したのは、 マルボロのソフトケースだった。 「またね」 と手を振って、彼氏のバイクの後ろにまたがって去って行くお前。 今でも変わらず気の強い女なんだろうな。 そしてよく尽くす女なんだろう。 俺はもうお前には何の未練もないつもりだったけれど、 煙草の銘柄が変わってたのは、ちょっとショックだったな。 お前はもう今や、俺が煙草を教えた女ではないんだよな。 多分。 (了) |
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