工藤伸一の小説
ドキュメント「村町市」 
Document of the "Village Town City"
【第1稿】 2002/09/09〜(未完につき執筆継続中) 【最終更新日】 2003/02/19

 『桃太郎アイスクリーム』の名産地であり、日本最古の森林地帯を有する秘境として知られる『村町市』の噂は、確かに私もそこかしこでそれとなく耳にしてはいたものの、そこを実際に訪れてみようなどという興味はまったく湧きもしなかった。そもそも私は『桃太郎アイスクリーム』なんて食べたこともないし、甘いものが大嫌いだから食べたくもないのだ。森林地帯にも何の関心もない。
 そんな私がどうしていままさにその『村町市』の森林地帯をさ迷い歩いているのかというと、それは私が行ったこともない府中市の住人だなどとおまわりさんに嘘をついてしまった からなのだ。おまわりさんは府中市行きの切符を手渡し、銀河鉄道に乗ったつもりで中央線のホームに飛び降りろと言い残した。その通りにしてみたところ私はいつのまにかここにたどり着いていたというわけなのだ。どうしてここが『村町市』だとわかったかというと、いたるところに『桃太郎アイスクリーム』の看板が立てられているから、多分そうだろうと思ったに過ぎない。
 しばらくあてどなく歩いていると、身長20センチくらいのおじいさんが木の上で昼寝しているのを見つけたので、声をかけてみた。おじいさんはすぐさま起き上がるやいなや3メートルはあろうかという高さの枝の上から宙返りをしながら華麗に飛び降りて見事に着地し、
「はいなも! なんでっしゃしゃろかいなも!」とみょうちくりんな言葉で聞いてきたので、
私はとっさに、「む、村町市の名前の由来を教えてくれませんか?」と、どうでもいい質問を口走ってしまった。
 おじいさんの答えを聞いて私は驚いた。『村町市』には中心部に村があり、その周りに町があって、さらにそれを市が囲んでいるというのだ。
 そんな市町村はいままで聞いたことがない。     《第2話につづく》

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