工藤伸一の小説
囮ボット(The DecoyBot)
【第1稿】2004/08/31 【最終更新日】2004/08/31 【公開日】2005/10/08

「俺は殺し以外の悪いことは何でもやってるんだ」
「盗撮も?」
「何だと?」
「盗聴やストーカー、掲示板荒らしもハッキングも?」
「馬鹿野郎! 俺は硬派な悪で通ってるんだぜ。手前みてえな変態と一緒にすんじゃねえ!」
「じゃあアナタは嘘つきですね。殺しだけじゃなくてやっていない犯罪がゴマンとあるというのに犯罪通を気取っているだけの犯罪マニアですね。盗人猛々しいとはアナタのことです」
「ごちゃごちゃうるせえんだよ! しばくぞこら!」
「言葉でいくら罵倒されてもワタシは負けませんよ」
「いい根性してるじゃねえか。だったらコブシで黙らせてやるよ!」
 ボコボコに殴られた男は、そのまま動かなくなる。
「おい、手前、思い知ったか。今日はこの位にしといてやる」
 青ざめていく男の顔。息をしていないようだ。
「キャー! 人殺し!」
 通りがかりの女性が叫ぶ。
「やべえ、やりすぎちまった」
 逃げようとする男の前に、待ち伏せていたこわもての刑事が歩み寄る。
 駆け出してきた数人の警官によって、あれよという間に男の身柄は拘束される。
「これでお前も犯罪のフルコースをたいらげたいっぱしの極悪人ってことだ。罪のない民間人を殺めたからにゃ、二度と娑婆には戻れねえ。覚悟しとけ」
「くそ! なんてこった」

 殺された男は生身の人間ではなく、政府が作り出した「囮(おとり)ボット」だった。
「囮ロボット」は前科を繰り返しては娑婆に放たれる犯罪常習者を挑発して自ら犠牲となり、殺人容疑で二度と娑婆に戻れないようにする責務を完璧に遂行する。
 刑法では「囮ロボット」を殺すと「殺人扱い」とみなされることになっている。多発する犯罪抑止のためにと考案された「殺されるために生み出された囮のなかの囮」。
 それが「囮ロボット」の悲しい正体なのだ。(了)


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