工藤伸一の小説
約束
【第1稿】 :2003/02/12 【最終更新日】 :2005/06/16

 待ち合わせ時間を30分過ぎてもいっこうに姿を見せない健一に痺れを切らした百合子は、健一に電話を入れた。
「健ちゃん、何してるのよ?」
「ごめん、仕事でトラぶっちゃって。あと10分だけ、待っててくれよ」
「来なくていいよ。もう帰るから」
「そんな! 1ヶ月ぶりのデートだっていうのに」
「いつもそうじゃないの! 待ってる方の身にもなってよ!」
「じゃあさ、百合子が前から欲しがってた指輪買ってあげるから、待っててくれよ。ダメかな?」
「わかった。そういうことなら待っててあげる」
「そうか、ありがとう」
「そのかわり、絶対に指輪買ってね」
 そして10分後、健一が待ち合わせ場所に着くなり百合子は宝石店に入り指輪を購入した。
「誕生日でもないのにこんな高いの買ってくれるなんて。ありがとう、健一!」
「まあ約束だったしな。しょうがない。喜んでくれて嬉しいよ。さて食事にでも行こうか?」
「食事? ひとりでするからいいわ。さようなら」
「え? どういうことだよ?」
「帰るのよ。毎回デートの度に待たされてたんじゃ不公平だし」
「待っててくれるかわりに指輪買ってあげたんじゃないか! 約束が違うよ」
「違わないわよ。10分待つとは言ったけど、デートするとは言ってないもの。じゃあ
ね」  (了)

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